研究概要 |
近年,歯科口腔外科手術後など各種の粘膜上皮欠損に対して,様々な基質を用いた自己培養口腔粘膜上皮による再建術の臨床応用が進められている.羊膜は,抗炎症,血管新生抑制,瘢痕抑制作用などを有し,これまでの報告から様々な上皮細胞の培養基質として適していることが知られている.そこで今回我々は,羊膜を基質に用いた培養家兎口腔粘膜上皮シートを作成し,自家移植を行った.そして移植片の組織学的および免疫組織化学的な検索を行い,培養上皮シートにおける口腔粘膜再建の可能性について検討を加えた.羊膜は帝王切開時に得られた胎盤より採取した.口腔粘膜組織片は,白色家兎より採取し,上皮細胞を分離後,羊膜上に播種し,3T3細胞と約3週間共培養を行った.家兎口腔内で外科的に口腔粘膜上皮欠損部を作製し,5〜7層の重層化を示した培養上皮シートの自家移植を行った.移植後14日目において移植片は周囲組織への生着しており,また粘膜分化型keratin4/13の発現を認めた.さらに基底膜構成成分であるintegrinα6,laminin 10の発現も認めた.今回我々が作成した羊膜上培養口腔粘膜上皮シートは,移植後において粘膜としての性質を持ち,基底膜成分を再生することがわかった.この培養上皮シートは口腔粘膜再建において有用なものとなりうる可能性が示唆された.
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