研究概要 |
唇顎裂,唇顎口蓋裂児の顎裂部骨移植手術時および顎骨骨切り手術時の余剰組織(骨組織)を本研究に供し、ヒト由来組織を使用するため北里大学倫理委員会の承認(B倫理01-19号、B倫理05-40号)を得ており、家族(保護者)同意のもとに行った。 【研究】骨髄間葉系幹細胞の初代培養後、継代培養による表面マーカーの変化と凍結保存後の継代培養によるそれの変化とをFACS(fluorescence-activated cell sorting)とMACS(Magnetic Cell Sorting)により細胞性状の変化とその安全性を比較検討した。 【方法】1.骨髄間葉系幹細胞の初代培養後、継代培養による表面マーカーの変化と凍結保存後の継代培養による表面マーカーの変化とを骨髄間葉系幹細胞(MCS)の表面マーカー(CD271抗体)を使用しFACSで細胞性状の変化を比較検討すると共に各継代培養時の間葉系幹細胞を骨へ分化誘導させ、in vitroにて骨組織のViabilityを検討した。 2.凍結間葉系幹細胞の培養細胞期間での細胞遺伝学的性状の安全確認として染色体数分析と染色体染色のバンドパターン変化をGバンド法で行った。 3.採取後骨髄を洗浄(+),非洗浄(-)にすることでのin vitro骨形成能を比較した。 【結果】 1.FACSによる表面マーカCD271発現は初代培養後の継代培養時と凍結保存後の継代培養時においてCD271(+)/CD271(-)比に変化を認めなかった。 2.CD271(+)細胞、CD271(-)細胞のいずれの骨髄間葉系幹細胞も初代培養後、凍結保存後にかかわらず多分化能を認めた。 3.in vitroにて骨組織のViabilityは初代培養後ではCD271(+)細胞が、凍結保存後ではCD271(-)細胞が有意に高かった。 4.Gバンド法による染色体数と染色体染色のバンドパターンの検索では初代培養後時継代培養、凍結保存後継代培養3年、5年8年において特に異常を認めなかった。しかし凍結5年、10年を経過した骨髄間葉系幹細胞では生存率の低下が認められた。 5.骨髄を洗浄(+)が非洗浄(-)より有意にin vitro骨形成能が高かった。 【結語】CD271(+)骨髄間葉系幹細胞の骨形成能は凍結保存後に低下する。Gバンド法による染色体検索では凍結保存による異常を認めなかった。骨髄の洗浄(+)後の初代培養が骨髄間葉系幹細胞獲得に適していると考えられた。
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