研究概要 |
初年度から本年度にかけて,ペイン・フリーニードルの試作機を製作した.本機は,薬液の注入量,注入速度とそのパターン,注射針の到達距離,注射針の進行速度,ならびに上限の組織圧を設定できるものである.2007年10月4日に北九州国際会議場にて開催された第34回日本歯科麻酔学会総会において,「ペイン・フリーニードルの開発第1報プロトタイプ機」と題して学会発表を行ったところ,多方面からの注目を受け,研究する意義の手応えを感じた.たとえば,これまでの電動注射器では,注入量および注入速度は選択できたが,それらを任意に設定することはできなかった. さらに,注入パターン,注射針の移動とそれに伴う到達距離,注射針の進行速度,注射針内の上限圧の設定などはシステムとして試みられることはなかった.学会への出席者から,多くの質問やコメント,本研究に対する期待などが表明された. 次に研究協力者をボランティアとして,予備研究に着手した.試作したプロトタイプ機を実際に口腔内の浸潤麻酔に試用した.予想していたよりも重く,口腔内への固定が困難なことが分かり,特製のリップガード(針の移動時に誤って,口唇やそのほかの粘膜を損傷しないための透明な隔壁)を製作したり,注射器の固定を口腔外に求めたり,コードを術者の肩に掛けるなど工夫した. これまでの研究代表者の結果から,最も痛みの少ない注入速度とそのパターンを一定の条件とした.注射針の進行速度を,0.10,0.25,0.50,0.75,1.00mm/secのいずれか2種類として,無作為に右側または左側の下顎小臼歯部根尖相当頬側歯肉にそれぞれの速度で1.0mlの局所麻酔薬を注入した.そして,痛みの強さを全長100mmのVAS(Visual Analogue Scale)で測定した.その結果,現時点では0.50mm/secが最も痛みが小さいことを確認した.
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