研究概要 |
顎関節症の病態をより明らかとし病因解明をはかるために以下の臨床的研究を遂行した。 1)上関節腔洗浄療法を施行した顎関節症III型患者66例についてbradykinin(BK),leukotrien B4(LTB4),prostaglandin E2(PGE2),substance P(SP)の定量したところ、無効群(15例)は奏効群(77%:51例)よりもLTB4の検出率が有意に高く、またBKの平均濃度が有意に高値を示したことから、蛋白成分のうちup-regulateしたLTB4とBKは病態をより重症化することが示唆された。 2)顎関節症III型と診断されMRIで正常円板位が確認された14例の患者について、上関節腔洗浄療法の際に採取された滑液中蛋白濃度を検討した。この結果、平均蛋白濃度は343μg/ml(36-791)で、以前の報告(1105-1830μg/ml)より低値であった。なお洗浄療法が無効で鏡視下手術を施行した4例において認められた著明な癒着所見は滑液中蛋白濃度の低下が正常円板位における症状惹起に関与することが考えられた。 3)顎関節症(27例28関節)から無菌的に採取した希釈滑液より得た抽出DNAについて16S rRNAのPCR増幅によるクローニング解析により細菌の塩基配列を同定した。この結果19関節(68%)で以下の11種の細菌が検出された。滑液中平均蛋白濃度は、細菌陽性群が陰性群よりも有意に高値を示した。 以上の結果より、顎関節症において種々の炎症物質など滑液中の蛋白量は増加することが明らかとなった。今後引続きさらに詳細な分析が必要である。
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