研究概要 |
ラット歯髄細胞を用いて脂肪細胞系譜と筋細胞系譜への分化誘導系と分化程度の評価法を構築した。(1)ヒト骨髄幹細胞のin vitro分化誘導系を応用して脂肪細胞系譜へ分化誘導過程で経時的に総RNAを調製し,GeneChip^<TM>(Affymetrix社)解析による約30,000遺伝子の網羅的発現解析を行った。遺伝子発現プロファイングより,有意に変動している遺伝子のうち,0Wに対し1,2,3WでUp-regulationしている割合は各々10.6,6.6,9.7%であり,Down-regulationしている割合は各々11.0,6.9,11.6%であった。ヒートマップ図から10個のクラスターが得られ,うち1つのクラスターで脂肪分化に重要であるPPAR gamma pathwayに特徴的な発現変動が認められた。リアルタイムRT-PCR解析でPPAR gammapathway上に存在するPpar gamma,C/EBP family,およびFabp4(aP2)は1Wで3倍以上発現が上昇していた。歯髄細胞はin vitro分化誘導系で脂肪細胞系譜へ分化できることを明らかにし,その分化にはPPARgammaを介するシグナル伝達経路の関与が示唆された。(2)間葉系細胞の骨格筋分化誘導系を適用し,筋細胞系譜へ分化誘導を試みた。分化誘導過程で経時的に総RNAを調製し,リアルタイムRT-PCRによって筋分化マーカーであるMyoD-1,BMP-4の発現解析を行った。MyoD-1の発現は分化誘導により上昇することが確認されたが,骨細胞系譜へ分化誘導するBMP-4の発現は高い状態を維持したままであった。そこでBMP受容体に拮抗的に結合しBMPシグナルを抑制するNogginを分化誘導培地に添加し分化誘導を行ったところ,効率良く筋細胞系譜へ分化誘導できる可能性を見出した。
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