研究概要 |
研究1【目的】C型肝炎ウイルス(HCV)は,扁平苔癬を引き起こすことが知られている。本研究では,C型慢性肝疾患患者における扁平苔癬発現率とインスリン抵抗性との関連を検討。【対象】1988年4月-2005年8月までに久留米大学病院を初めて受診した慢性肝疾患患者105,984名のうち2006年4月までに定期通院している生存患者で,肝外病変の精査が行えた87名。【方法】扁平苔癬の検索,肝疾患の検索,糖尿病の検索,その他の肝外病変の検索。【結果】肝外病変の有病率は以下の通り:扁平苔癬19.5%,糖尿病21.8%,高血圧症28.8%,甲状腺機能異常20.7%,肝外悪性腫瘍9.2%。対象患者87名のインスリン値は23.3±42.0μU/L,HOMA-IR値は7.1±18.8と高値を示した。対象者のうち,扁平苔癬の合併を認めた17名(グループA)と合併のない70名(グループB)について検討すると,グループAはグループBに比べて,喫煙歴,高血圧,肝外悪性腫瘍罹患率,インスリン値,HOMA-IRが有意に高かった。扁平苔癬の発現部位は,口腔(頬粘膜76.5%,下唇35,3%,上唇11.8%,歯肉5.9%,舌5.9%)が最も多く,下肢皮膚23.5%,上腕皮膚5.9%,体幹皮膚11.8%,咽頭粘膜5.9%,膣粘膜5.9%。研究2【目的】歯科治療上の感染予防では,肝炎ウイルスへの対策が重要である。本研究では,歯科医療従事者の肝炎ウイルス感染を調査。【方法と対象】歯科医療従事者141名に問診を行なった後,HBs抗原,HBs抗体,HBc抗体,H)CV抗体,HBe抗原,HBe抗体,HBV DNA量,IgM-HBc抗体,HCV RNA定性を測定。【結果】HBs抗原陽性,HCV抗体陽性者はいなかったが,HBs抗体陽性率,HBc抗体陽性率は,各々51.8%,12.1%。 HBc抗体陽性率は加齢に伴い増加し,医療従事年数が長くなるほど増加。B型肝炎ワクチンの接種経験者68名中,HBs抗体陽性者は51名(75.0%)。ワクチン未経験者63名中HBs抗体陽性者は17名(27%)で,17名のうち15名はHBc抗体が陽性。【結論】B型肝炎ワクチン接種者は,HBV感染に対する高い防御率を示した。
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