本年度は、破骨細胞分化因子RANKL存在下歯根膜由来細胞とCD14陽性細胞との共存培養系において、CD4陽性T細胞サブセットであるTh17細胞が破骨細胞(破歯細胞)を分化誘導し、Th1細胞とTh2細胞は分化誘導を抑制する現象に関して、その詳細を検索した。 Th1細胞もしくはTh2細胞の非存在下の実験により、破骨細胞分化はインターフェロン-γ、インターロイキン(IL)-4によって抑制された。また、Th17細胞の発現するRANKLのみでは破骨細胞分化は難しく、Th17細胞の発現するIL-17が歯根膜由来細胞に作用しRANKL発現を増加し破骨細胞へ分化させることが示された。これは歯根膜由来細胞にIL-17を作用させるとRANKLの発現が亢進した結果からも裏付けられた。さらに、IL-1、IL-6など炎症系サイトカインは歯根膜由来細胞のRANKL発現を亢進させた。 また、骨芽細胞に対する伸展刺激負荷の影響を検索した実験により、オステオプロテグリン(OPG)の発現は変化せず、VEGF-A/VEGFR-1発現が増強しVEGF-Aがautocrine的に作用し、RANKLやMMP-13発現を増強するとともに破骨細胞分化が亢進した。しかしながら、CD14陽性細胞のCSF-1およびRANKL刺激による破骨細胞への分化は、伸展刺激負荷により抑制されたことと相反した。これらの結果はRANKLとOPGとの発現バランスが重要であると示唆され、更なる検討が必要である。 以上の結果より、Th1細胞およびTh2細胞による破骨細胞(破歯細胞)分化抑制機構が失われ、Th17細胞および炎症性サイトカインによって破骨細胞の活性化が亢進することにより、乳歯の病的あるいは非生理的な歯根吸収を生じることが示唆された。
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