研究概要 |
【目的】 A. actinomycetemcomitans(A.a)による歯槽骨の喪失は,宿主の免疫システムと骨芽細胞自身との相互作用による破骨細胞分化の活性化によって歯槽骨吸収が促進されることにより説明されており.A.aが直接的に骨芽細胞の分化に影響を与え,若年性歯周病の発症に関与するとの報告はない。我々はA.a培養上清がin vitroで骨芽細胞の分化を阻害することを発見し,その阻害活性物質を追求した。 【材料及び方法】 マウス由来正常骨芽細胞MC3T3-E1を用いた。A.aは血清型aのATCC43717を用いた。BHI培地に接種したA.aはCO2インキュベータ内で静止期まで培養した後.さらに2日間培養した。培養終了後,A.aは遠心により菌体を分離し.得られた培養上清を濾過滅菌して実験試料とした。 コンフルエントになったMC3T3-E1の培地にA.a培養上清またはその他の試料を添加して,24時間培養した細胞からTrizol試薬を用いてtotal RNAを抽出した。MC3T3-E1の分化への影響はreal-time RT-PCRにより分化マーカー alkaline phosphatase(ALP), osteocalcin(OCN), bone sialoprotein(BSP)のmRNAの発現を測定して,指標とした。 【結果】 MC3T3-E1の培地にA.a培養上清を添加して培養した細胞ではALP, OCN, BSPとも濃度依存的に発現が阻害されていた。また骨芽細胞の分化初期に発現するALPに比べ,後期に発現するOCN, BSPの発現は著しく阻害されていた。培養上清を5%添加した細胞ではBHIを添加したビークルコントロールに比べALP mRNAの発現は33%,BSP, OCNは20%に阻害された。 以上の結果からA.a培養上清中にMC3T3-E1の分化阻害物質が含まれていることが明らかとなった。現在まで,このような活性を持つA.aの菌体外物質は報告されていない。
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