研究概要 |
A.a培養上清によってMC3T3-E1の細胞間ネットワークは濃度依存的に阻害され,また,A.a培養上清による細胞間ネットワークの経時的阻害作用の実験結果から,その変化は可逆的であることが考えられた。また,その阻害活性は100kDa以上の画分にのみ存在し, Polymyxin Bを同時に添加すると阻害活性は完全に失われていることから,分化阻害物質同定の時と同様に,細胞間ネットワークを阻害する物質がLPSである可能性が考えられた。さらにA.aより抽出したLPSは培養上清を加えた場合と同様に細胞間ネットワーク阻害した。また,この作用は抗IL-1α抗体,抗IL-6抗体で阻害されなかった。以上のことからA.a培養上清に含まれるLPSは炎症性サイトカインを介することなくMC3T3-E1の細胞間ネットワークを阻害することが示された。 A.aのLPSがMC3T3-E1の細胞間ネットワークを阻害することついてはこれまでに報告はないが,今回のCx43をターゲットとしたReal-time RT-PCRとウエスタンブロットの結果から,LPSはgap junctionのpost translationalな調節機構として知られているCx43のリン酸化(46)や,Cx43の発現そのものには影響を与えていなかった。なお,今回は結果を示していないが,LPSを添加して3日間培養を継続した細胞を用いたウエスタンブロットではCx43のバンドが抑制されていたが,LPS添加による細胞間ネットワークの阻害は24時間で極大となっており,3日後のCx43バンドの抑制はこの結果とは直接の関係はないと判断した。したがってLPSによる細胞間ネットワーク阻害と関連があるのはCx43の細胞内の局在の変化であり,免疫染色の結果とあわせてもLPSがCx43の細胞膜への局在を阻害することで細胞間ネットワークを障害する可能性が高いと考えられた。
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