研究概要 |
乳歯から永久歯への正常な交換は小児歯科学の重要なテーマであるのにも関わらず、そのメカニズムは全く解明されていない。歯根吸収は多数の形態学的な研究から永久歯の萌出によるものと考えられているが、後継永久歯胚を欠如していても生じることが多い現象である。また乳歯の歯根病変の予後は不良なことが多く、歯根を異常吸収してしまうことが高頻度に生じる。これに対し同様の歯根病変によって永久歯が歯根吸収を生じることは非常に稀である。 以上のことから、乳歯の歯根吸収はあらかじめプログラムされていることまたは永久歯歯根が吸収阻害機構を持つことが示唆される。 ところで、近年実用化されたDNA Chip/Microarray法は、微量のサンプルから多数の遺伝子の発現解析を行うことを可能にした、非常に有用な方法と考えられている。 そこで本年度は、ヒト乳歯および永久歯の歯根膜由来線維芽細胞様細胞での遺伝子発現を、ヒトの遺伝子クローン(EST2949クローンを含む、約9000クローン)に関して検討した。その結果、永久歯歯根膜で特異的に発現している遺伝子はそれぞれ57クローン(0.62%),123クローン(1.3%),75クローン(0.82%)であった。また乳歯歯根膜で特異的に発現している遺伝子はそれぞれ75クローン(0.82%),53クローン(0.58%),84クローン(0.91%)であった。さらに全ての実験群で共通している遺伝子を検索したところ,永久歯、乳歯共にそれぞれ2個であった。 今後これらの遺伝子の機能に関して解析を継続する予定である。
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