研究概要 |
永久歯と比較し、乳歯象牙質の物性は低く、化学的に反応しやすいとみなされている。そこで、マイルドな脱灰能を有し、齲蝕象牙質第2層に十分浸透し、操作性が簡便な乳歯の齲蝕処置に適した試作レジンシステムを開発する事を目的に研究を開始した。 平成18年度に実施した研究内容と結果: §試作レジンの開発:新しいレジン材を開発中である。 §試験1:既存の接着性レジンであるAQ Bond Plus(サンメディカル社)を健全ならびに齲蝕下乳歯象牙質に応用し、試料を作製した。 nano-indentation testにより接着界面の超微小硬さ(H)と弾性率<ヤング率>(Y)の測定ならびにFE-SEM, SEMとTEMによる接着界面の超微細構造の観察を行った。 (1)健全象牙質の接着界面のHとYは、接着界面より下方ゐ象牙質のHとYよりも有意に低かった。 (2)齲蝕象牙質(齲蝕象牙質第2層)の接着界面のHとY及び接着界面より下方の象牙質のHとYの間には、有意差がみられなかった。 (3)齲蝕歯、健全歯ともにhybrid層の厚みは約1μmであった。 (4)健全歯では、接着界面に著明なsilver nanoleakageが観察されたが、齲蝕歯の接着界面におけるsilver nanoleakageはごくわずかであった。 (5)EDXにより接着界面を分析中である。 §試験2:健全乳歯象牙質と健全永久歯象牙質にAQ Bond Plusを応用し、微小引張り接着強さを測定すると共に破断面をFE-SEMで観察した。 (1)微小引張り接着強さは、乳歯と永久歯間で有意差がなかった。 (2)破壊形態は、乳歯も永久歯もすべての試料が界面破壊であった。 平成19年度の研究計画:健全乳歯象牙質接着界面部における物性の低下とnanoleakageを防止できる新しいレジン材を開発すると共に、AQ Bond Plusの欠点を補うとされている新規レジン材を使用して研究を続行する。
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