研究概要 |
捻転歯の矯正治療後の後戻り防止策の研究の一環として,ヒト歯根膜におけるrelaxinの作用に関する研究を計画し,in vitroにおけるヒト歯根膜細胞のrelaxin receptorの有無,relaxinがヒト歯根膜線維芽細胞のコラーゲン代謝に及ぼす影響をCol-I, Col-III, MMP-lについて検討した。また捻転歯モデルとして細胞伸展を行い,それらにおけるrelaxinの影響についてCol-I, MMP-lについて検討した。ヒト歯根膜細胞にrelaxin刺激を行いCol-I, Col-III, MMP-lのタンパク発現とmRNA発現について検討した。さらに捻転歯モデルとして歯根膜細胞の伸展を行い,その時のタンパク発現およびmRNA発現をELISA法およびreal-time PCR法にて検討を行った。 免疫染色およびRT-PCRによって,ヒト歯根膜細胞にrelaxin受容体であるLGR7, LGR8の発現が認められた。relaxin刺激後(1ng/ml-100ng/ml, 48時間),Col-Iタンパク産生量およびmRNA発現量はrelaxin濃度依存的に減少が認められた。一方,MMP-1のタンパク産生量およびmRNA発現量はrelaxin濃度依存的に増加が認められた。細胞伸展を行った結果,Col-IとMMP-l共にのタンパク産生量およびmRNA発現量が増加した。さらに細胞伸展後、relaxin刺激を行った結果,Col-Iタンパク産生量およびmRNA発現量はrelaxin濃度依存的に減少が認められ,MMP-lのタンパク産生量およびmRNA発現量はrelaxin濃度依存的に増加が認められた。以上の結果より,relaxinがヒト歯根膜細胞におけるCol-IとMMP-lの発現に影響を与えたことより,このホルモンが矯正治療後の後戻りを防止するのに有効である可能性が示唆された。
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