研究概要 |
本研究は、時計遺伝子DEC1による間葉系幹細胞の骨分化誘導におけるメカニズムの解析を目的として、以下の実験を行なった。 (1)間葉系幹細胞の骨分化における時計遺伝子の影響 DEC1過剰発現は、骨分化関連転写因子Runx2およびOsterix mRNA発現を促進し、アルカリフォスファターゼ(ALPase)発現および石灰化の亢進も確認された。 (2)時計遺伝子誘導因子が及ぼす骨関連遺伝子発現の変化 (1)低酸素状態下での培養によって、DEC1 mRNA発現が促進された。さらに、Runx2およびOsterix mRNA発現の上昇、およびオステオポンチン(OP)、ALPase、オステオカルシン(OC)mRNAの抑制が認められた。 (2)低酸素条件下での培養後の通常酸素条件に戻しての骨分化誘導により、OP, ALPase, Runx2, Osterix mRNA発現の亢進が認められた。 (3)時計遺伝子による骨関連遺伝子誘導のメカニズムの解明 このメカニズムの解明する目的で、低酸素状態によって誘導される遺伝子HIF-1αの影響を検討した。 (1)HIF-1α過剰発現は、時計遺伝子および骨関連遺伝子の発現には影響しなかった。 (2)siRNAによるHIF-1α mRNAの発現抑制は、Osterix mRNA発現を減少させた。 (3)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によるHIF-1α転写活性の促進は、DEC1を誘導し、OP mRNA発現を促進、OC mRNA発現を抑制した。 以上の知見より、時計遺伝子DEC1は低酸素によって誘導されるHIF-1αによって制御され、低酸素条件でのHIF-1α発現および転写活性の調整により骨分化に対しての影響を及ぼすと考えられる。これにより、DEC1による骨分化促進においてHIF-1αが重要な役割を果たしていることが示唆された。
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