歯周疾患活動性マーカーとして現在は、IL-1b、コラゲナーゼやI型コラーゲン前駆体で骨形成マーカーであるI型プロコラーゲンC末端ペプチド(PICP)等が報告されている。しかしながらこれらのバイオマーカー測定は、ウェスタンブロット法やELISA法などで測定されているが、これらの測定法は大学など大規模な研究施設・機材を保有する施設でしか利用できず一般の歯科診療所などではバイオマーカーとして利用することは困難である。そこで環状ポリオレフィンを材料とする数センチ角のマイクロチップ基板上にマイクロ流路を形成したバイオチップを用いて迅速・省サンプル・簡易なバイオマーカー測定系を確立することで、一般歯科医院のチェアーサイドでも利用可能なバイオマーカー解析デバイスの構築を目指した。マイクロ流路表面をリン脂質による表面処理を行った後微小インクジェットを用いて流路表面に一次抗体として抗PICP抗体を固定を行い抗原抗体反応を用いたPICP検出系を構築した。二次抗体としてはペルオキシダーゼ標識抗PICP抗体を用いている。この結果、3.0μlのサンプル量で抗原導入から30分でPICP 0〜640ng/mlの濃度範囲で定量的な検出系の構築を行った。さらに血漿サンプルを用いた場合では、マイクロチップを用いて得られた結果と従来の臨床検査で用いられている96穴プレートを利用したELISA法から得られる値とでは統計的に有意な差は認められず、開発したバイオチップによるリアルサンプル中のPICP検出法は十分に臨床応用が可能とあると考えられる。インクジェットを用いることでマイクロ流路上には複数の抗体固定化が可能となるが、今後は他のバイオマーカーについても特異的抗体固定化を行うことで歯周病活動性マーカーのマルチ解析が期待できる。
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