細胞移植に基づく歯周ティッシュエンジニアリングを応用した新たな歯周再生治療の開発を目指して、アルカリホスファターゼを発現する3次元多層性ヒト歯肉線維芽細胞シート型移植材を作製し、これをラット下顎骨の開窓型歯周組織欠損モデルへ移植して治癒に及ぼす効果を検討した。欠損モデルはKingらの方法に準じて作製した。移植後の拒絶反応を抑制するため免疫抑制剤FK506を投与した。移植後経時的にラットを屠殺し、通法に従ってパラフィン切片を作製し、HE染色、アルシャンブルー染色、または免疫染色を施して組織観察および組織形態計測を行った。欠損を形成して何も移植しなかったラットを対照群とした。主な所見は以下の通りである。細胞シートを移植した歯槽骨欠損部は、bone sialoprotein(BSP)陽性の線維性骨で満たされていた。欠損内部に形成された新生骨組織の割合は、何も移植しなかった対象群のそれと同程度であった。切削象牙質面にはBSP陽性でアルカリホスファターゼ陽性の細胞が集積し、新生セメント質の形成と歯根膜の再生が見られた。同部にアンキローシスは認められなかった。細胞シート移植群では、骨欠損部に隣接した骨膜側にアルシャンブルー陽性でBSP陽性の軟骨を介した硬組織の形成が認められた。このような硬組織の形成は対象群では認められなかった。以上の所見から、アルカリホスファターゼを発現する3次元多層性ヒト歯肉線維芽細胞シート型移植材は、膜性骨化による歯槽骨の再生を支持し、さらに、軟骨内骨化による歯槽骨の増生を誘導することが示された。従って、この細胞シートは歯周再生治療に有用な移植材となる可能性が示唆された。
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