歯周病原性細菌のひとつであるActinobacillus actinomycetemcomitansは様々な型の歯周炎の発症に深く関与している。これまで我々は、マウスマクロファージ細胞株であるJ774.1やヒト単球細胞株であるTHP-1にA.actinomycetemcomitansを感染させると、アポトーシスにより細胞死に至ることを報告してきた。さらに、感染により細胞内のp38 mitogen-activated protein kinase(MAPキナーゼ)が活性化され、アポトーシスが惹起されることを報告した。近年、MAPキナーゼは炎症性サイトカインであるTNF-αにより活性化され、アポトーシスへの情報伝達を担っていることが多く報告されている。そこで平成18年度では、A.actinomycetemcomitans感染ヒト単球細胞のアポトーシス発現へのTNF-αの関与について検討すことを目的とした。 A.actinomycetemcomitansを感染させたヒトTHP-1細胞に、TNF-αアンタゴニスト、抗TNF-α抗体、あるいはTACE阻害剤を各々実験系に添加し、TNF-α産生量、p38活性およびアポトーシス発現について検討を行った。この結果、いずれの試薬も感染細胞におけるTNF-α産生量、p38活性およびアポトーシス発現を有意に抑制した。このことから、A.actinomycetemcomitans感染細胞ではp38が活性化されアポトーシスが誘導されると同時に、細胞外に産生されたTNF-αが細胞膜上のTNFレセプターを介して細胞内p38を活性化している可能性が示唆された。
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