成熟した破骨細胞をRANKL(receptor activator NF-kB ligand)不在下で培養すると急速にアポトーシスを起こし死滅する事が知られている。この事は、活性化した成熟破骨細胞の維持、延命にもRANKL-RANKシグナルが関わっていると考えられる。しかしながら、この様な炎症性疾患の骨吸収の場における活性化した成熟破骨細胞の維持や延命のメカニズムに関する情報は少ない。現在まで破骨細胞には数種類のインテグリンが発現している事が知られているが、各種インテグリンの成熟破骨細胞の役割は不明な点が多く、特に成熟破骨細胞の維持、延命を視点においた各種インテグリンの作用に関する網羅的な報告は未だにされていない。そこで、成熟破骨細胞の維持、延命の制御に関与するインテグリンを網羅的に探査し、また、その機能発現におけるケモカイン-インテグリンのシグナル伝達経路を解明する目的で行ってきたところ、現在まで以下のような結果を得た。 1)マウス骨髄細胞およびRAW264.7細胞由来の成熟破骨細胞においてインテグリンβ7遺伝子が強く発現している事が、Gene ArrayとRT-PCRによって明らかとなった。 2)マウス骨髄細胞はRANKL刺激後、3日目に最も強くインテグリンβ7遺伝子を発現し、破骨細胞への分化過程で強く発現する事が示された。 3)破骨細胞の延命にMIP-1gammaが強く関与している事を、DNA断片化で確認した。 4)抗インテグリンβ7抗体は破骨細胞の分化を抑制しなかった。 インテグリンは2量体として機能を発現するが、インテグリンβ7はα4およびαEと2量体を形成している事が知られている。 5)インテグリンα4遺伝子は破骨細胞の分化過程で恒常的に発現し、αEは成熟破骨細胞で強く発現している傾向がRT-PCRによって示唆された。 今回の結果から、インテグリンβ7は破骨細胞の分化に強く関与している事が示唆された。今後はインテグリンとケモカインとの関係を含めた詳細を検討していく予定である。
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