研究概要 |
(1)ヒト歯根膜細胞の軟骨分化誘導およびTGF-β3刺激による各種腱・靱帯マーカー遺伝子の発現制御: ヒト歯根膜細胞を軟骨分化誘導培地でペレット培養すると、腱・靱帯マーカー分子のPeriostin, Periodontal ligament associated protein-1 (PLAP-1), Biglycan, Decorinの発現は増加し、Cartilage oligomeric protein (COMP), Growth and differentiation factor-5 (GDF-5)の発現は減少したが、Scleraxisの発現は変化しなかった。また、単層培養下でTGF-β3刺激すると、Periostin, PLAP-1, Biglycan, Scleraxis, COMPの発現は増加し、一方GDF-5の発現は減少し、Decorinの発現は変化しなかった。以上の結果から、歯根膜細胞におけるこれらの分子の発現は、軟骨が誘導される環境下やTGF-β3の刺激により変化して、歯根膜の創傷治癒や組織恒常性の維持に関与していると考えられる。 (2)ヒト歯根膜細胞中に存在するSide Population (SP)細胞の特徴: ヒト歯根膜細胞中にSP細胞は平均0.07%存在していた。また、間葉系幹細胞のマーカーの1つであるCD73の遺伝子発現はSP細胞以外の細胞集団であるmain population (MP)細胞と比較してSP細胞で高く、一方、type I, type III collagen, PLAP-1, periostin, decorinなどの歯根膜で特徴的な細胞外基質の遺伝子発現はMP細胞で高かった。さらに、SP細胞はMP細胞と比較して高い細胞増殖能を示したが、骨・脂肪への分化能は、両者で有意な差は認められなかった。したがって、間葉系幹細胞がヒト歯根膜細胞中のSP細胞分画に濃縮されている可能性は低いことが明らかになった。
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