研究概要 |
本研究の目的は, 1)要介護高齢者における口腔細菌に対する免疫能,栄養状態,気道感染症との関連性を明らかにし, 2)さらに口腔ケアがそれらに影響を及ぼすか否かを明らかにすることである. 精神障害(統合失調症)患者は,歯みがきなどのセルフケアの低下による口腔環境の劣悪性が指摘されており,口腔保健の支援が必要とされている.そこで,札幌市内H病院に入院中の統合失調症患者10名について精神症状,免疫能,栄養状態,口腔環境,唾液ストレスマーカーを調査し,口腔ケア介入によりそれらがどのような影響を受けるか検討した. 【方法】 1)まず,全例において精神症状を陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)で,生活障害を精神障害者社会生活評価尺度(LASMI),抑うつ症状をベック抑うつ質問表(BDI-II)で評価した.また,口腔清掃状態,口腔乾燥度,口臭などの口腔内評価を行った.さらに,唾液ストレスマーカー(アミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンA, Cu/Zn SOD)を測定した. 2)口腔ケア介入:週1回の歯科医師による専門的口腔ケアを行った. 3)8週間の口腔ケア介入後に,1)について再評価した. 【結果】(1)陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)と唾液中のクロモグラニンAとCu/Zn SODとの間に弱い相関関係が認められること,(2)精神障害者社会生活評価尺度(LASMI)とクロモグラニンAとの間には強い相関関係が認められること,(3)べック抑うつ質問表(BDI-II)とアミラーゼとの間にも強い相関関係が認められた.コルチゾールは,いずれの精神症状の評価尺度との間に明確な相関が認められなかった(Spearmanの順位相関係数) 【考察】唾液中マーカーが精神症状とも連動するため,ストレスの評価に有用であることを改めて示している.
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