研究概要 |
昨年度の研究では、口腔常在菌Streptococcus gordoniiのランダムノックアウトライブラリを用い、S.gordoniiのどの様な分子が歯周病原性菌Porphyromonas gingivalisとの混合バイオフイルム形成過程に関与するのかを明らかにした。同定されたこれらの遺伝子群は、その推定機能により以下のような4つのグループに大別された。i)菌体内および菌体間シグナル伝達(cbeおよびspxB),ii)細胞壁生合成と菌体表層凝集素タンパク質の構造維持(murE,msrAおよびatf),iii)莢膜生合成(pgsAおよびatf),iv)生理機能(gdhA,ccmAおよびntpB)。さらに、これらの10遺伝子について、各々に特異的ノックアウト株およびコンプリメント株を作成し、P.gingivalisとの混合バイオフイルム形成能を野生株と比較したところ、全ての特異的ノックアウト株において形成能の低下が認められ、またそれらのコンプリメント株では形成能の回復が確認された。 今年度の研究においては、これらの遺伝子のうち、細菌のシグナル伝達に関与していると推測されるcbeおよびspxBに着目し、S.gordoniiのcbe特異的ノックアウト株およびspxB特異的ノックアウト株において、デンタルプラーク形成過程の中間に介在し重要な役割を果たす紡錘菌Fusobacterium nucleatum存在下においてもP.gingivalisとの混合バイオフイルム形成能が低下しているかどうかを調べた。その結果、S.gordonii野生株に比較して、cbe特異的ノックアウト株のP.gingivalisとの混合バイオフイルム形成能はF.nucleatum存在下においても有意に低いことが示された。
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