研究課題/領域番号 |
18592280
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
河原 和子 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20034209)
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研究分担者 |
島津 篤 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (10274094)
柴 秀樹 広島大学, 病院, 講師 (60260668)
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キーワード | MICA / ストレスタンパク質 / 歯根膜細胞 / TGF-β |
研究概要 |
MICAは細胞のガン化や感染、有害物質や低酸素への暴露等によって発現が誘導されるストレスタンパク質である。ガン細胞の殺処分マーカーや移植抗原として機能することが明らかにされているが、その他の機能は十分にわかっていない。H19年度に私たちは、培養ヒト歯根膜細胞を炎症性サイトカインや細胞増殖因子で刺激し、リアルタイムPCRでMICA発現レベルを精査したところ、当初の予想に反して、代表的炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1よりもトランスフォーミング増殖因子(TGF-β1)によって強く発現が誘導された。しかし塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)では、無刺激サンプルと同程度か僅かに低めであった。この結果を踏まえて、H20年度はまず(1) FGF-2のMICA転写制御能について検討した。すなわちFGF-2はMICA転写に全く影響しないのか、それとも抑制的に働くのか。(2)グラム陰性細菌内毒素(病原体因子LPS)のヒト歯根膜細胞のMICA転写誘導レベルについて<結果と考察>(1)等量のTGF-β1とFGF-2の二重投与を行ったところ、TGF-β1単独投与サンプルに比べてMICA発現を1/2〜1/3程度に抑制したことから、FGF-2は歯根膜細胞のMICA発現を負に制御することが明らかとなった。(2)ヒト歯根膜細胞は、LPSに対する受容体TLR-4およびこれらの結合によるシグナル伝達に必要な分子を備えることが明らかにされている(Hatakeyama,2003)。しかしMICA転写誘導に関しては、LPS刺激濃度、刺激期間によらず、ほとんど無刺激サンプルと同レベルであった。一般に線維芽細胞に対してFGF-2は増殖を、TGF-β1は増殖を抑制して分化や基質産生を促す。以上の結果から、歯根膜細胞においてMICA発現は、炎症性環境下のみならず、傷害からの組織修復過程に何らかの役を果たす可能性がうかがわれた。
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