初年度は分子量マーカーの改良、2色の蛍光色素の導入による精度と効率の向上を目指し、キャピラリー電気泳動による測定の誤差をほぼ1.5塩基の幅にまで縮めることができ、さらに2色の蛍光色素を用いてPCR産物の両末端を標識して同じ泳動の回数で今までの2倍のサンプルを処理できるようになり、精度・速度の両方の点で大きな改善が見られた。この精度の向上は、単なり効率の向上を意味しているだけでなく、今まで本法では不可能だと云われていた、細菌叢中の菌種の推定への道を開くものである。従来は±3〜5塩基と誤差が大きく、菌種の推定は不可能であるとされていたが、この精度の向上によって、その可能性がでてきた。 菌種推定には、DNA断片長から16S rRNAの塩基配列に基づく計算によって種の推定のための計算を効率よく実行するプログラムが必要となる。そのプログラムは、スクリプト言語としてPHP、リレーショナル・データベースとしてMySQLを用いて作成した。16S RNAデータベースは、The Ribosomal Database Project II (http://rdp.cme.msu.edu/)の30万個の遺伝子配列データを基に、使用する制限酵素と蛍光標識の組合せで得られるすべての末端DNA断片の分子量を計算して作成した。 上記のキャピラリー電気泳動による解析と断片長解析プログラムによる菌種推定の結果は、PCR産物のクローン解析による菌叢分析の結果とよく一致した。このことから、電気泳動の精度向上と分子量に基づくプログラムの開発によって、今まで困難とされていたT-RFLP法による菌種推定が可能になったということが示された。
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