タバコシバンムシLasioderma serricorneが住環境に極めて普通に生息することを明らかにし、更に、本種の体表面と消化管から病原微生物が分離されることを明らかにしている(衛生動物、2002;家屋害虫2004)。本大会では、2006年に追調査した結果について報告する。 2006年6月〜10月に東京・神奈川・埼玉所在の一般住宅9軒、小学校1校、児童公園5カ所、病院に隣接する自動販売機裏1ヵ所の合計16ヵ所でフェロモントラップ(富士フレーバー社製)を用いて捕獲調査を実施した。トラップは、いずれも14日間設置し、捕獲された個体から真菌類の分離検査を行った。分離されたAspergillus ochraceus15株にっいてはochratoxin A産生能を、A. flavus7株についてはaflatoxin産生能を検査した。また、走査形電子顕微鏡(日立S-3500N)を用いて本種の体表面に付着するカビ胞子を観察した。 本種はいずれの場所でも捕獲された。本種から分離された真菌はCladosporium属>Aspergillus属>Penicillium属の順で多かった。本種は「A.ochraceusを体表面に付着させて運ぶ」こと、また、本種から分離された「A.oehraceusは高いochratoxin A産生能を有する」ことをこれまでに報告してきたが、今回の検査結果でも同様に陽性傾向が見られた。これに対して、aflatoxin産生能は陰性傾向であった。本種がA.ochraceusのcarrierとなることによる、食品のオクラトキシン汚染の可能性が推察される。また、本種の前胸背板の体毛に付着する胞子が「胞子由来の粘着物質」によって固定されていることが電顕観察から明らかになった。これは、「昆虫とカビとの間に何らかの意図的な関係がある」ことの示唆ではないかと推察する。
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