研究概要 |
病院の室内環境汚染問題は2002年から2003年にかけてのSARS騒ぎで、病院内における感染症に対する対応の困難な状況が浮き彫りとなったことで、世界各国に広がる感染汚染の問題は今後の院内感染対策をさらに見直す時期を迎えたと言える。特に近年の医療施設は社会的な評価が重要となり、今まで以上に高品質および高度は管理体制が要求されているにも拘わらず、院内感染対策を重視した設計は充分ではなく、院内感染のリスクは依然として高いと考えられる。したがって医療施設では住環境以上に環境微生物による汚染からの対策について充分な配慮が必要である。特に医療における環境微生物汚染対策には、あらゆる感染源、感染経路の特定に関する情報が不可欠である。しかしながら衛生動物が媒介する微生物の研究については,研究者が少なく「ハエと蚊が媒介する細菌とウイルス」に集中しており,他の昆虫と微生物との関係については殆んど研究が進んでいないのが現状である。そこで,これら一般にはあまり認知されていない医療施設(病院、一般診療所、歯科診療所)、居住環境(一般住宅の屋内と周辺屋外)や公共施設(学校,児童館の屋内と周辺屋外)などの環境中に生息する微小昆虫の生息状況と細菌・カビとの関係を調査し,生息域の細菌および空中浮遊菌との関連性を検討する。これと平行して実験室内にて、既知のカビおよび細菌をチャンバー内において拡散させ、タバコシバンムシに一定時間曝露させ、その生体中の量および分布を検討し、これらの情報を明らかにすることで、医療施設ならびに居住環境中の細菌とカビの動態を調査することにより、これまで認知されていなかった新たな院内感染経路を明らかにすることは予防医学の上からも貴重なデータとなると考えられる。
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