歯の喪失に対して、遺伝的要因がどのように関与しているのかを検索する目的で、8020達成者と無歯顎者を対象に、骨代謝および長寿に関するSNPsの発現頻度について解析した。 対象者は、8020達成者199人、無歯顎者61木であった。試料採取はBuccal Swab法、DNAの抽出はシリカビーズ吸着法を用いて行った。その後、ASP(Allels Specific Primer)-PCR法を用いて、SNPsの発現頻度が、8020達成者と無歯顎者との間において、どのように異なるのかを検索した。インターロイキンIL-1βのrs1799916、rs1133555、rs1143634およびミトコンドリアのMT10398、MT5178においてはSNPsの発現頻度が、8020達成者と無歯顎者との間で、ほぼ同じであった。また、NFκB2のrs2295587に関しては、TC型が無歯顎者では10.3%であるのに対して、8020達成者では6.0%であったが、有意差は認められなかった。 それに対して、NFκB2のrs2281583に関しては、無歯顎者がすべてGG型であるのに対して、8020達成者では、GG型が90.0%、AG型が9.5%、AA型が0.5%の値を示し、有意差が認められた。NFκB2については、歯科疾患と関連した遺伝子多型を報告した例はほとんどなく、NFκB2が炎症反応の調整因子として働くことから、歯科疾患の遺伝子解析にとって重要な知見を得たと考えている。 以上の結果から、NFκB2のrs2281583がAG型あるいはAA型であることが歯の健康因子である可能性が示唆された。また、歯科疾患の遺伝子解析においては、遺伝的リスク要因の解明というアプローチだけでなく、歯の遺伝的健康要因の解明というアプローチも必要なことがわかった。
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