脳機能画像研究(治療前後の比較検討など)による舌痛症の高次中枢性病態の解明を目的に、本年度は男性1例、女性1例についてSSRI(fluvoxamine)による治療前後におけるSPECTを施行し脳血流量評価を行った。女性例では初診時両側前頭葉前部から前部帯状回に軽度の血流低下が認められたが、治療後軽度改善が認められた。男性例では治療前も治療後も有意な脳血流の異常は認められなかった。今後さらに症例を増やして検討する予定である。 第21回日本歯科心身医学会にて「歯科心身症に対する新しいアプローチ」という教育講演を行い、これまでの臨床研究を総括し、今後の方向性を論じた。 各論的には、舌痛症に対するSSRI単剤とベンゾジアゼピンとの併用療法を比較検討し、第51回日本口腔外科学会総会にて「舌痛症に対するフルポキサミンとロフラゼプ酸エチルの併用療法」と題し発表した。さらに第11回日本心療内科学会総会にて「舌痛症のSSRI、SNRIへの反応性と無効例への対策について」発表を行った。 これらの研究成果をまとめ、日歯心身誌に「歯科心身症としての舌痛症」という総説にまとめた。 なお、SSRIの副作用については、口臭症の自験例を元にThe 3rd Conference of Asian Association for Breath Odor Research(ASBOR)にて"Paroxetine and suicidal preoccupation in a patient of halitophobia"という口演を行い、安易な使用には警鐘を鳴らした。 第16回日本有病者歯科医療学会では、「頻回の電話などで対応に苦慮した統合失調症の2例」と題し、歯科領域に混在する精神病圏の病態と対応について講演発表した。 また第22回日本歯科心身医学会にて「歯科心身症の診断治療ガイドラインについて」というワークショップをオーガナイズした。
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