1.疾患概念規定・疾患分類の検討;歯科心身症患者について、診療録などの臨床データをもとに「歯科心身症」の疾患概念、さらに診断基準の規定を試みた。第22回日本歯科心身医学会総会・学術大会ワークショップをオーガナイズし、本症の診断・治療ガイドラインについて議論を重ねた。全国的に治療者間・施設間格差もかなり大きいことが判明し、さらに実用的なものとなるよう検討を続けている。 2.臨床統計的調査と整合性・試案の修正;当科新来患者に対して上記疾患概念や疾患分類試案を適用して、臨床統計的検討を行い、第184回日本口腔外科学会関東地方会にて発表した。本症の診断や治療法の選択が経験年数やトレーニングを受けたバックグラウンドなどの影響を受けやすいことが示唆された。 3.治療アルゴリズム構築の試み;代表的な歯科心身症である舌痛症について、どのような症例にどのような薬剤を第一選択とすればよいか、また効果不十分な時には代替策としてどうすればよいかを検討し、第48回日本心身医学総会や19th World congress on psychosomatic medicineにて発表した。 4.脳機能画像検査;舌痛症や非定型歯痛など歯科心身症6例に対し、SPECTによる脳血流評価を行った。まだ十分な症例数には達していないが、臨床的にはほぼ同様の病状でも脳機能画像的には個人差が大きいことが示唆され、症状に関与する脳内神経回路の多様性が推測された。 5.疾患概念・疾患分類の見直し作業;最新の脳科学や神経薬理学的知見をも取り込みながら、文献的な裏づけとともにより臨床に即した本症の疾患概念・疾患分類の見直し作業を繰り返している。
|