1. 歯科心身症の疾患概念規定・疾患分類の検討・推敲については、舌痛症、非定型歯痛、咬合異常感 (Phantom Bite Syndrome) に関して、臨床的特徴を抽出したチェックリストを作成し、今年度当科初診患者へ適用し、推敲を重ね、その妥当性について検討した。その結果を素案としてまとめ日本歯科心身医学会に発表した。さらに「歯科心身症」と「精神病」の違いが問題とされることが多いが、歯科心身症の精神科診断名に関して、精神科より紹介された約140名の疫学的データを解析した。その結果を次年度に学会発表の予定である。 2. 治療アルゴリズム構築の試みについては、高齢者の舌痛症に対するSelective Serotonin Reuptake Inhibitor (SSRI) の有効性を報告した。また非定型歯痛の治療についても論文化し、印刷中である。さらに舌痛症に対するSNRIの用量反応性などの臨床研究を実施し、論文にまとめる作業に入るところである。 3. 脳機能画像研究に関して、SPECT担当の放射線科医師の異動などによって若干進行が遅れた。結果の解釈が難しい面があり、現在のところ疾患特異的な所見より個人差の大きさが目立った結果となっている。さらに症例を増やして検討していく予定である。 4. 歯科心身症診療ガイドラインの策定に関しては、まだevidenceとして確立するほどの知見やデータが不足しているが、できる限りの努力で集積されたデータから第23回日本歯科心身医学会総会ワークショップにて、代表的な歯科心身症に関する診断ガイドライン案を発表した。咬合に関連した歯科心身症などは各々の症例について画一的な治療が適切とは言えず、治療ガイドラインについてはさらに検討していく予定である。
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