研究課題
高齢者肺炎の多くは誤嚥性と言われ、予防には口腔ケアが効果的とされている。施設における誤嚥性肺炎の発症につき、その頻度、介護度との関係、発症の時期を検討し、口腔ケアとの関係をや、脳血管障害既往歴との関連を明らかにする目的で以下の研究を行った。【対象】平成14年8月〜平成19年2月の間に3ヶ月以上入所した241名(平均年齢:84.6歳)【方法】1.誤嚥性肺炎が疑われる入所者を、嚥下性肺疾患研究会の嚥下性肺炎の診断基準に従って診断する。2.誤嚥性肺炎の発症率を介護度、性、入所してからの期間毎に検討する。3.肺炎の発症を脳血管障害の既往歴の有無で検討する。【結果及び考察】誤嚥性肺炎は53名に96回発症していた。発症率は介護度1で最も低く3.6%、5で最も高く44.4%、平均22.0%であった。発症時期は、全発症例の70%、特に第1回目の発症の74%は入所15ヶ月以内の発症であった。脳血管障害既往歴の関係は、既往がある者の27.6%に、また既往が無い者の17.6%に誤嚥性肺炎がみられた。発症率がこれまでの報告よりやや高くなっており、その原因を考察中である。また、高齢者・障害者の方に多く認められる口臭と口腔内細菌叢との関連性についても心理的、生活習慣的側面や全身性疾患との関連性を踏まえて検討した。その中で、Helicobacter pyloriは胃腸粘膜疾患との深い関連性を知られる菌である。同菌は口腔内で検出されることもあり、口腔内におけるH.pyloriの存在は、再感染や感染の入り口として重要とされ、また歯周病や口臭との関連も注目されている。そこで、口腔内のH. pylori感染と口臭の関連性を検討するために、口臭患者362名の唾液サンプルについて16S rRNA遺伝子を利用したPCR解析を行った。その結果、H.pylori陽性は21名(6.4%)、陰性は305名(93.6%)であった。陽性群は陰性群に比べて、唾液潜血、動揺度、歯周ポケット、歯周病原細菌の検出などの歯周病パラメータにおいて統計学的に高い値を示した。次に、両群の口臭パラメータを比較したところ、メチルメルカプタンにおいて陽性群が有意に高かった。口臭患者における口腔のH. pylori感染の報告は本研究が初めてであり、H.pyloriは進行した歯周病環境下にて多く検出され、代表的な歯周病原細菌と同時検出されることがわかった。さらに、舌苔因子を取り除いた解析により、H.pyloriの口腔感染は歯周病を介して間接的に口臭に関係していることが示唆された。
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