本研究の目的である、高齢社会のニーズにあった歯科衛生士教育プログラムの見直しについては、日本歯科大学東京短期大学歯科衛生学科の教育内容について検討をおこなった。その結果、修業年限3年制での総教科数(48)のうち高齢者福祉や介護予防に関する科目は5科目であった。教科のコア・カテゴリーを分析すると、高齢者保健福祉の制度や高齢者特有の全身疾患・口腔疾患の特徴、摂食・嚥下障害に対するリハビリテーション等のカテゴリーがあげられた。その結果、介護予防システムをあらゆる視点から取り入れた教育を検討する場合には「口腔機能の向上」プログラムだけではなく、「運動器の機能向上」や「栄養改善」などのプログラムとの連携を考慮する必要があると考える。 また、通所介護サービスセンターで介護予防プログラムを実施している社会福祉士と看護師、歯科衛生士にインタビューをおこない、アセスメント、実施、評価を基盤とした「口腔機能向上サービス」の結果を収集した。プログラム後の変化としては、利用者の口腔機能に対する意識が向上したことや、昼食後の口腔ケアを実施する者が増えた、食べこぼしやむせが減ったなどの項目があげられた。歯科衛生士と介護職との連携については、利用者が常食を摂れるように口の健康を考えている職員が多く、「口腔機能向上プログラム」の目的を職員全体で共有することが、口腔機能向上・維持のきっかけとなっていることが示唆された。 さらに「基本的介護計画」に口腔ケアが含まれている施設は多く、各施設において口腔ケアは普及している実態は把握されたが、口腔ケアの担当者は介護職員が多数を占めており、口腔ケアの質の確保は不十分であると推測できる。
|