平成22年4月より全国全ての歯科衛生士学校・養成所は3年制以上の教育課程を編成することになる。歯科衛生士の業務が多様化するなかで、高齢者に関連する教育内容の見直しは急務である。本研究の目的でもある、介護保険制度に基づいた介護予防システムを包括した歯科衛生士教育の構築のニーズは高い。なかでも、介護予防の中核をなす口腔機能の向上に重点を置いた臨地実習では、実際に学生が利用者のアセスメントから計画の立案、実施、評価までを担当し、歯科衛生士としての専門性を体験できる教育のプランニングを実践した。 前年の通所施設職員に対するアンケート調査の結果から、利用者に口腔機能の向上に関するプログラムを実施している施設は全体の7割であった。さらに、歯科衛生士に対する認知度は高く、口腔ケア以外の業務も担当可能であれば、雇用を検討できると述べている。歯科衛生士の専門性に期待する意見では、口腔ケアの実践も要望されているが、介護現場での口腔領域のアドバイザーとしての役割を望んでいた。 また分担研究者の成果では、高齢者施設における看護師・歯科衛生士の協働に関するヒアリングを行なった結果、口腔ケアは日常の介助であるため、ローテーション勤務の介護者が担当することが多い。そこで、入所者の情報をそれぞれの職種が共有することは必須であり、中でも身体に関連する数値を読み取ることが出来れば的確な対応が可能になる。医科、歯科、介護領域のマンパワーの連携は介護の質を高める要因として重要である。 以上の調査から、高齢者福祉に関連する歯科衛生士教育の充実を図るためには、介護保険制度に基づいた教育プログラムの構築とさまざまな介護保険施設等における実践を繰り返すことで、歯科衛生士としての専門職の意識が高まり教育効果が認められた。
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