1.臨床実践における倫理的問題と人権問題に関する調査 医療倫理教育へのニーズについて、実態を明らかにするために、看護、理学療法、作業療法、診療放射線検査、衛生検査に関わる医療専門職者28名を対象に、質問紙調査を行った。この結果、基礎教育において「医療倫理」を科目として履修したと答えたものは51.9%であった。その内容について、「QOL」、「延命処置」、「脳死と移植」、「インフォームドコンセント」については、80%以上の回答者が「学習した」と回答し、学習の必要性については「患者の権利」、「終末期医療」、「QOL」、「インフォームドコンセット」に関して、「非常に必要である」と回答していた。半数の回答者は臨床で倫理的問題に遭遇したと解答しており、解決のために学習する必要性を感じていた。以上の結果から、医療の先端技術に関する倫理的問題よりも、「患者」の生活や自律性、権利に関する倫理的問題に関心を持っており、基礎学習において学習した内容であっても、臨床において実際に倫理的問題に遭遇し、さらに学ぶ必要性を感じていた。 2.研究結果の統合と考察 医療専門職者に共通して、卒前・卒後教育における倫理教育の必要性は強く認識されカリキュラムの体系化が開始されていた。現在、各医療専門職者に必要とされている倫理に関する問題は異なっていたが、「人間関係」を基盤とする患者とのコミュニケーションのあり方、患者の自律性・権利の擁護という視点からは共通点を持っていた。チーム医療の充実のためには、基礎教育期から、合同の授業を展開することで、相互理解が深まり、臨床で起きている倫理的問題に対応できる可能性が示された。基礎教育期の学生の医療倫理に関する関心や学習の必要性の認識には特性があり、この特性を踏まえて、学習させるトピックスや専門科目の学習との関連を考慮し、カリキュラムを構成する必要がある。
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