研究課題
看護職をはじめとする医療職が嚥下困難のある対象者に対して日常的に行ってきた食事援助時の体位の選択が根拠に基づいて行われておらず、経験的、習慣的に行なわれていることは文献からも明らかである。そこで、食事動作時の体位と嚥下動作時の喉頭挙上筋群の筋電図を同時に測定することにより安全かつ安楽な姿勢や頚部の角度を求めることを目的に検討を行った。仰臥位から45度程度にベッドを挙上することにより、心電図のR-R間隔から求めた心拍変動解析から、交感神経活動の指標であるLF/HFは増加を示した。それ以下の角度では交感神経活動の変化は認められなかった。副交感神経活動の指標であるHFはベッドの挙上に従って低下する傾向が見られた。ベッド角度を90度にすると、ほとんど被験者においてさらに交感神経活動が増加する傾向が見られた。嚥下動作のモデルとして、水を飲む動作による喉頭挙上筋群からの筋電図測定を試みており、これらの筋群が迷走神経咽頭枝により制御されていることが予測されていることから、さらに精度の高い測定方法と測定部位の検討を継続している。筋電図の測定が対象者に非侵襲的な表面筋電図の測定であることから明らかな迷走神経咽頭枝を見いだすことに限界はあるが、電極の選択、個体差を考慮した測定部位を明らかにしたいと考えている。迷走神経活動により調節を受けると考えられる嚥下動態と体位変換により増加する交感神経活動を同時に測定することにより、対象者に安全で安楽な姿勢や頚部の角度を選択できる根拠の提供を目指した。