看護職をはじめする医療職が嚥下困難のある対象者に行ってきた食事援助時の体位の選択は、嚥下性肺炎や窒息を回避する目的で行われているが、経験的あるいは習慣的に行われていることが多い。そこで、食事援助時に選択される体位について心電図測定から心拍変動解析を行い、同時に嚥下動作時の喉頭挙上筋群の筋電図を測定し、嚥下困難や高齢者に安全で安楽な食事援助を行うための基礎的な検討を行うことを目的とした。心拍変動から得られた自律神経活動の変化は、ベッドを30度に挙上すると迷走神経活動の指標であるHFの低下と交感神経活動指標であるLf/HFの増加が始まり、45度を超えると明らかな変化を示した。嚥下困難が迷走神経活動の低下に伴って起こることも示唆されていることから、迷走神経活動と交感神経活動のバランスから評価することも必要であることが示された。嚥下困難のある対象者では、循環動態、呼吸状態など不安定なことも予測され、今回の健康成人の測定結果よりも極端な変化を示すことも予測される。嚥下困難や高齢者など食事援助の必要とされる対象者に安全で安らかな体位を選択するための根拠として心拍変動解析による自律神経活動の評価と表面筋電図の測定は、非浸襲的で対象者に苦痛を与えることなく行える評価法であり、看護職が自ら行うことのできる評価法として有効な手段と考える。
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