[研究の目的]本研究の目的は、看護師が倫理的ジレンマの生じる状況の中で下す倫理的意思決定に影響を及ぼす選好要因について、倫理的問題を見出す能力である倫理的感受性とその問題に対処するために必要な倫理的意思決定との関係も明らかにすることである。 [実施結果]1)倫理的感受性測定尺度について:昨年度の調査結果をスーパーバイザーのアドバイスを受けながら、グランデッドセオリー・アプローチによる分析を進め、倫理的感受性に影響する要因を精選した。主に価値観を形成する因子と倫理的感受性の向上または低下に影響を及ぼす因子との2つのカテゴリーが抽出された。この結果をもとに、倫理的感受性測定尺度案を作成した。2)選好要因について:上記で得られたデータより、倫理的判断の基準となる倫理原則を抽出した。抽出された原則は「自律」「正義」「公平」等だった。医療者に求められる主な倫理的原則の認識とそれに基づく判断はなされていた。しかし、直面する状況や看護師個々の能力によって、どの原則をもとに倫理的判断がなされているが、状況によってどの原則を優先的扱うのか異なっていた。そこで、抽出された内容と先行研究をもとに、実際に医療現場で直面するであろうと考えられる場面を設定し、仮想的質問紙を作成した。3)日米との比較について:1)2)の結果を踏まえ、Wisconsin大学のLea Rae教授の紹介により、米国の看護教員と臨床看護師に前述の質問紙をもとに、インタビュー調査を行った。その結果、同様の状況に対して、日米間の倫理的問題に対する意識やとらえ方が異なることが明らかとなった。また、看護師の倫理的役割に対する関心にも差がみられた。
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