本研究の目的は、(1)倫理問題を同定する能力である倫理的感受性を測定するために作成した、倫理的感受性測定尺度の妥当性と信頼性の検証、(2)看護師の倫理的意思決定の際「善行」「自律」「誠実」「正義」「忠誠」等の倫理原則が選好要因としてどのように影響しているのか明らかにすること、(3)看護師が実践面で直面する倫理問題に対しどの問題を優先するべきであるのかの判断基準を見出すである。 以下のことを実施した結果が得られた。 1)倫理的感受性測定尺度:昨年度の調査結果の分析を進め、倫理的感受性に影響する要因を精選した。主に価値観を形成する因子と倫理的感受性の向上または低下に影響を及ぼす因子との2つのカテゴリーが抽出された。この結果をもとに、倫理的感受性測定尺度案を作成した。2)選好要因:上記で得られたデータより、倫理的判断の基準となる倫理原則を抽出した。抽出された原則は「自律」「正義」「公平」等だった。医療者に求められる主な倫理的原則の認識とそれに基づく判断はなされていた。しかし、直面する状況や看護師個々の能力によって、どの原則をもとに倫理的判断がなされているが、状況によってどの原則を優先的扱うのか異なっていた。さらに分析を進めたところ、倫理原則の中で「自律」については他の原則以上に強く認識されていることが明らかとなった。また、インタビューの対象が病棟勤務の看護師だったためか、「正義」に関する問題を認識している者はいなかった。この点は、アメリカの臨床看護師と大きく異なる点であった。アメリカの看護師は倫理的問題をより広くとらえていた。また、看護師の実践能力そのものが倫理的存在であることを強く認識していた。3)質問紙作成:抽出された内容と先行研究をもとに、実際に医療現場で直面するであろうと考えられる場面を設定し、仮想的質問紙を作成した。含まれる原則は「自律」「善行」「誠実・忠誠」「正義」とした。
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