研究概要 |
本研究は,爪の形を整え,正しい爪の成長を促す技術の提供が,下肢の血液循環ならびに起立、歩行機能にどのように働きかけているのかを,解き明かすことを目的とする。そこで平成19年度は,前年度から継続事項である「(1)健康成人を対象とした‘爪切り'前後における下肢の血液循環および歩行動作に変化の検討」に加え,「(2)健康高齢者を対象とした‘爪切り'前後における起立姿勢歩行の変化の検討」を計画として挙げた。 1.健康成人者を対象とした変化の検討 20歳前半の健康女性19名を対象に,爪の状態により生じる身体反応の違いについて3〜6ケ月間の追跡調査を実施した。いずれの対象者とも,起立、歩行動作での足裏の使い方について追跡開始前と後とでは変化は見られなかった。また,血流状態を示す足の皮膚表面温度においては,追跡開始後の方が温度は低かった。さらに,期間中に足のトラブルが発生したのは2名であった。2名とも,爪の陥入による爪周囲部の疼痛出現であり,爪切りケアの提供によって疼痛は解消し,その後も痛みの出現なく経過した。 2.高齢者を対象とした爪切りケアの効果の検討 60歳以降の健康高齢者男女19名を対象に,爪切りケア(必要時 スキンケア)の提供による身体反応の違いについて3〜6ケ月間の継続介入調査を実施した。足トラブル(爪白癬,腓胝)のタイプ別に,「Group1:爪白癬(遠位、側縁部爪甲下型)のみ」「Group2:腓胝のみ」「Group3:どちらも無い」の3つの群に分け検討した。3ケ月間爪切りケアを提供した結果,爪白癬状態や立位姿勢時の重心位置も変化なかった。立位時の足底圧においては,Group1とGroup2では改善され,Group3では変化なかった。このことより,爪切りケアは,足底に胼胝を持つ高齢者と爪白癬を持つ高齢者の立位姿勢に影響を及ぼすことが示唆された。
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