研究概要 |
本研究の目的は、健康であった時に生活していた環境とは物理的にも社会的にも異なる環境で療養しなければならない患者に、よりよい療養環境を提供するための看護ケアは何かを追及することである。患者は療養環境の中でも「音」を非常に問題視していた。ある音をどのように感じるかは、性格に影響を受けることが知られている。たとえば、同じ音環境で生活していても、音に敏感な人は鈍感な人よりも音環境に不満を持ち、内向的な人は外交的な人に比べて音に敏感であるという。また、音に敏感な患者にとって、入院生活中に聞こえてくる音は療養生活の支障となるという報告もある。そこで、平成18年度は個人特性の中の音に対する感受性に着目し、ヒトの音に対する感受性が生活の場の音環境に影響を受けるのかどうかを大学生を対象に調査した。その結果、音の感受性は居住地の音環境や、その変化に影響を受けないことがわかった。この理由としては、現在のわが国では都市と郊外の生活の音環境の差が減少してきていること、学生が課外活動やアルバイトなど自宅外で過ごす時間が多くなっていることなどが考えられた。また、今回の調査では音の感受性を評価するためにThe Noise-Sensitivity Scale(TNSS)(Weinstein, 1978)の日本語版を用いた。そして、日本語版TNSSを音の感受性の指標として使用できることが証明された。しかし、ヒトの音に対する感受性と居住地の音環境との関係については傾向がつかめたが、音環境と個人の性格、置かれている状況との相互関係についてはまだ未解決の部分が多い。このため、本年度は予備調査とし、この結果を鑑みて来年度からの本調査へ拡張する予定である。
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