研究の目的は、健康な時に生活していた環境とは物理的にも社会的にも異なる環境で療養しなければならない患者に、よりよい療養環境を提供するための看護ケアが何かを追究することである。昨年度はわが国における音の印象に影響を及ぼす個人特性を明らかにするために、ヒトの音に対する感受性に着目し、ヒトの音に対する感受性が生活の場の音環境に影響を受けるのかどうかの調査を、健康な大学生を対象に実施した。しかし、対象者の生活環境や生活スタイルが様々だったために「音の感受性」と「音環境」の関連を明確にすることができなかった。そのため、平成19年度は同じ生活環境で長期間生活している学生寮の女子学生を対象にしてアンケート調査を行った。 また、本年度は、臨床(主に病室)で発生している話声の音響工学的な要素(声の周波数や音色など)や患者が興味をひく会話の内容を解明することを目的としたデータ収集が本格的に実施できるように準備を行った。この研究は患者が療養生活をしている場での音の実測調査であり、個々のプライバシーに立ち入る可能性があるため、対象者に心身共に不利益を生じさせないように留意する必要がある。そのため、平成19年度は、本研究に協力してくれる施設の確保に努めるとともに、臨床で確実にデータが収集できるように臨床とほぼ同等の環境を設定しプレテストを行った。次年度は研究協力施設におけるデータ収集を本格的に実施し、分析、検討を行う予定である。
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