研究概要 |
人工股関節全置換術(Total hip arthroplasty : THA)後患者の環境移行をサポートする教育・支援方法の構築に向けて、平成18年度は、健康生活支援プログラム開発の準備段階として、下記の3つの検討を行った。 ◆術前アセスメントの評価: THA前患者9名を対象に訪問調査を行い、術前アセスメントの内容について、患者指導の視点から専門職(看護師,理学療法士、医師)67名の評価を得た。その結果、とくに生活動作・居住環境等の具体的な生活習慣に関する評価が高く、これらの術前アセスメントが、個々の対象によって異なる術後の問題点の早期予測と、重点化すべき支援内容の選択に有効であることが示唆された。 ◆再置換術の要因に関する検討: 先行研究の結果をもとに、THA後患者の環境移行を査定するアセスメント項目を設定し、これらとTHA後の再置換術との関連をみるために、THA後患者128名(再置換あり群44名、再置換なし群84名)を対象に郵送調査を行った。その結果、ロジスティック回帰分析により再置換術と関連がみられた項目は、「股関節の寿命への気遣い」「性別」であった。また、「再置換なし」群で術後の改善傾向がみられた「生活形態」もまた、アセスメント指標として有効であることが示唆された。 ◆アルゴリズム案の作成: 先行研究をもとに、THA前後患者のアセスメントおよびケアの構成要素を抽出した。その結果、アセスメントの要素60項目は「基本属性」「身体機能」「生活動作」「物的環境」「対人的環境」「教育・管理的環境」に分類され、ケアの要素は「入院前」「入院中」「退院後」の各時期における個々の患者の危機的移行の程度に応じて、重点化すべき支援内容の異なる6種類に設定された。これらの結果をもとに、時間の変化を縦の主軸として、アセスメントとケアの要素の構造化を行い、患者の環境移行をサポートするアルゴリズム案を作成した。
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