今年度は、研究の最終年度のため演習用電子カルテソフト「ワイズマン電子カルテシステムER](以下演習用電子カルテ)に、看護過程事例-周手術期にある患者-を挿入して、その評価に対する予備調査を実施した。まず、聴診波形表示装置「トレーニングマスターIII」「電子聴診器」を用いて、呼吸音・心音・腸蠕動音の集録を行い、事例に挿入した。次に、心理面に対するアセスメント力強化のために、実際に申請者が行った手術をした患者に対する調査結果の一部を事例に反映させた。これらの事例に対する、学生の意見・希望、学習状況について任意の5人の学生に予備調査を実施した。学生は、演習用電子カルテにフィジカルアセスメントに関連した「音」情報を取り込んだことに対して、アセスメントの客観性と共有性を期待しており、それを活用することでアセスメント力向上への示唆を得られた。一方、挿入された演習用電子カルテの「音」情報を聴くことで、その部分にとらわれ、全体の観察や判断が曖昧になるという意見もみられ、事例展開のプログラムデザインの工夫および演習用電子カルテ使用前後の教育的支援のあり方が必要であることも見出された。身体面だけではなく、心理的情報を意図的に事例に挿入することで、手術前後の患者の心理やコーピングを意識した援助について考慮できることが推察され、教材としての事例のリアリティを高めることが、より実践的なアセスメントカとそれに基づいた援助の考慮に連動することが示唆された。今後も実際の患者状況から乖離しない教材事例作成のために、患者の心身の状況を具体的に明らかにする研究が必要と考える。 以上のように演習用電子カルテに「音」情報も含めた看護過程事例を挿入して、実際に演習を行うことで、看護実践能力の向上に寄与できることが示された。
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