研究課題
基盤研究(C)
【目的】与薬システムの電子化が進んでも、持参薬や変更・中止に伴う与薬ミスが続いている。本研究では、与薬ミスを予見するアセスメント手法の開発を目的として、病棟看護師の与薬行動を観察し、看護師の与薬作業の工程をFMEA((Failure Mode and Effect Analysis)の手法を用いて、影響分析(発生原因、発生頻度)を行った。【方法】平成19年2月縲恤ス成19年3月の2ヶ月間に、A大学病院の小児科を含む3病棟で、中堅看護師5名を対象に、与薬業務を中心に観察し、面接を実施した。なお、調査時間は8:00から18:30であった。与薬業務をFMEAで分析した。【結果・考察】与薬作業の工程はマニュアル化され、3病棟ともにマニュアルどおり与薬業務が遂行されていた。しかし、中止・変更が多い小児科や内科病棟では、せっかく薬剤部で一包化した薬袋をわざわざ看護師が開いて薬を取り出し、再びホッチキスで留めなおすといった煩雑な作業が繰り返されていた。定時薬では間違いが生じにくいが、臨時処方では看護師が介在する割合が高くなり、その分与薬ミスの頻度が高く影響度も高いことが明らかになった。また、看護師たちは、分包されてから患者の手元に届くまでの工程、あるいは中止・変更が生じ薬を返品するまでの過程が複雑で、マニュアルを覚えきれないと話しており、この与薬業務の工程における与薬ミスの頻度が高いことが示唆された。さらに、手術が多く比較的短期入院の高齢者が多い眼科病棟では、退院に向けて薬の管理を患者に委ねた際、飲み忘れが頻発していた。この原因は、患者の自己管理能力のアセスメントの工程がマニュアル化されていないために、生じていることが明らかになった。