研究課題
基盤研究(C)
本研究では、薬物事故の防止に役立てることを目指して、専門知識を持ち合わせていない看護師でも、簡便に与薬事故リスクをアセスメントする手法の開発を目的としている。具体的には病院内の与薬事故の中でも発生率が高い経口与薬事故に着目して、看護師の経口与薬業務(以下与薬業務)に潜む影響度の高いエラーを弁別し、対策を講じてより簡便で効果的な分析手法を検討するものである。本研究ではまず、既存の分析方法としてFMEA(Failure Mode and Effects Analysis)に注目し、この分析方法が看護師の与薬業務に潜む影響度の高いエラーを弁別し、効果的な対策を講じるのに役立つか否かを検討する。FMEAとは品質管理の分野で利用されている手法で、作業過程におけるあらゆる失敗モードを事前に列挙し、その中から周囲への影響度の高い失敗モードを抽出して、事前に対策を講じるものである。わが国ではまだ実証研究は少ないが、アメリカではHFMEA(Health Failure Mode and Effects Analysis)と称して、産業用のFMEAが応用されている。18年度は看護師の与薬業務の行動観察とFMEAの結果が一致した与薬事故のリスクを示したことからFMEAは、実際の与薬事故のリスクを予測する分析方法であることが示唆された。19年度はこれを踏まえ、調査の規模を拡大し検討した結果、A病院(特定機能病院)におけるFMEAは、大規模病院であるゆえに、効率性が悪く分析に時間を要した(延べ19時間)。一方、B病院(循環器専門病院)の検討では、病院の規模が小さいため、作業が効率的に進められ、与薬FMEAの作業は比較的少ない時間(15時間)で進めることができた。B病院における与薬事故の原因は、看護師の「配薬業務」におけるマニュアルの不備にあることがわかり、マニュアルを作成しなおしたところ、与薬インシデントをゼロに減らすことができた。しかしながら、分析作業にかかる時間が膨大で作業者の負担が大きかったことから、20年度は、分析に関わる看護師の負担を軽減するために、研究者のかかわりを増やし、従来のFMEAの分析作業を簡素化した。その結果、作業時間が5時間と大幅に減少し、インシデントの報告件数も1件のみとなり、スタッフの満足感も高まった。
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