研究概要 |
近年,わが国では高度医療の進展や高齢者数の増加に伴い意識障害が長期に及んでいる遷延性意識障害患者(以後,意識障害患者と略す)は推定34,400人以上といわれている.意識障害の治療および看護の方法は国際的にもいまだ確立されていないが,全身機能の維持に留まらず,機能回復を促進し活動性を高めることが看護における重要な課題である.これまで,意識障害患者の栄養については,過剰栄養という観点から研究が行われ,患者は活動性および基礎代謝量が低下し,また体重増加は介護負担を増大させる要因であり,一日の栄養摂取量は800〜1,200kcalが妥当であるといわれてきた.しかし1000kcal/日の経管栄養を行っていた患者が極度に痩せて生命の危機に瀕している症例が見られ,また高齢者施設などでは意識レベル・性別・身体機能を問わず一律のカロリーで栄養管理されている実態もあり,低栄養患者の存在が危惧された.低栄養は身体および精神機能の回復を阻み,肺炎等の合併症発症のリスクを高め,また医療経済的な負担が大きい.看護学的にも,生活者である意識障害患者の活動性を高めるために,積極的な栄養管理が必要である.特に診療頻度の少ない在宅や施設等の患者の低栄養が懸念されるため,本研究では時間に制限のある訪問看護師や施設において評価可能な簡易な栄養評価指標の開発を目的とした. 平成18年度は,意識障害患者の栄養状態の評価,そして二次的合併症(肺炎・褥瘡・尿路感染)の発症要因についての文献調査,ならびに予備調査を実施した.栄養評価においては,昨今のNST導入や栄養加算の設定など,医療・介護において非常に注目されている領域である.したがって,関連する研究論文・発表などの新知見について再度文献調査を行い,意識障害患者の栄養評価ならびに合併症の発症要因に関する予備調査を実施した.
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