研究概要 |
わが国の意識障害者数は推定34,400人以上といわれているが,医学的な治療および看護の方法は国際的にもいまだ確立されていない.しかし,意識障害患者であっても回復の可能性を秘めており,身体および精神機能の回復促進に向けて,全身状態の調整という観点から栄養管理は必要不可欠である.しかしながら,意識障害患者は活動性が低い,基礎代謝量が低下している,また体重増加は介護を困難にするという理由から,栄養摂取カロリーが年齢・性別等に関連なく一律のカロリーに制限され,低栄養状態に陥る患者も多い.病院であれば栄養状聾の悪化の際には血液検査などで容易に評価が可能であるが,福祉施設や在宅療養においてはすぐに栄養評価を実施することは困難である.そこで,本研究では福祉施設や在宅で簡易に評価可能な栄養評価指標を開発することを目的とした.今年度は,意識障害患者の栄養管理に関する事例をもとに,栄養状態の経時的な評価を行った.栄養評価の指標としてAlb値は有効であるが,Alb値のみの評価では十分でないことも多いため,上腕の皮下脂肪厚やウエスト・ヒップ比などの項目を含め,相対的な評価を行った.積極的にリハビリテーションを実施する意識障害患者を対象に,栄養状態の介入と経時的な変化について研究した.当初は栄養評価ということで皮下脂肪厚の低下に注意していたが,ほとんど自動運動のない意識障害患者でも他動的なリハビリテーションにより筋肉量の増加が認められ,またそれに伴い基礎代謝量が増加していった.今後の予定は,コーホート研究が遅れているため,次年度も引き続き継続していきたいと考えている.
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