研究概要 |
意識障害患者が長期化している遷延性意識障害者数は,推定34,400人以上いるといわれているが,医学的な治療および看護の方法は国際的にもいまだ確立されていない.意識障害患者の現状として,急性期を脱した後でも積極的なリハビリテーションが行われることは少なく,臥床(寝たきり)状態になる患者が多い.自発的な運動が少ないことから筋肉量は減少し,また肥満防止という理由により経管栄養のカロリ―は基礎代謝量程度,あるいはそれ以下に設定され,褥瘡や肺炎等の二次的合併症を発症するという悪循環に陥る患者が多い.しかしながら,長期化している意識障害患者でも回復事,例は見られ,合併症予防のみならず身体および精神機能の回復促進を目的にした栄養管理は必要不可欠である. これまで,経管栄養を行なっている意識障害患者の栄養状態や合併症発症の要因について調査を行ってきたが,昨年度から意識障害患者を対象に,意識回復や身体機能の向上を目的にした4週間の看護プログラムを行い,看護プログラム導入における栄養状態の経時的な変化に関する調査を行ってきた.その結果,基礎代謝量程度のカロリーでは活動量の増加に伴い体力低下をきたすため,看護介入前の栄養評価と栄養摂取カロリー量の増量が必要であった.そして,栄養評価指標として決定的な要因は見出せなかったものの,意識障害患者の栄養評価には体重減少やAlb値のほかに,表情や意思表出の状況等の主観的な評価の重要性が示唆された.
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