【目的】膠原病の発症や経過中の増悪に種々のストレスが関与するとの報告があり、またいくつかの疾患ではストレス適応系としてのHPA-axisの機能異常を示唆する報告もある。今回、代表的な膠原病の患者において、ストレス適応系としてのHPA-axisを含む神経・内分泌・免疫系の機能異常の有無について検討した。【方法】強皮症(SSc)17名、関節リウマチ(RA)13名、全身性エリテマトーデス(SLE)12名の膠原病患者及び健常人46名に対して、計算ストレス負荷前後における血清中の種々の神経・内分泌・免疫系活性物質を測定し、さらにストレス関連QOLの調査を行った。【結果・考察】膠原病患者のQOLは全般的に健常人より低かったが、コヒアレンス感(ストレス対処能力)や最近の自覚ストレスの程度については健常人と有意な差はなかった。膠原病特にRAとSLE患者では負荷前の血清cortisol値が健常人より有意に高値であった。また、多くの膠原病においてストレス負荷後にはCRH、ACTHは上昇するもののcortisol値はほとんどかわらないという健常人とは異なるパターンを示した。今回、治療薬としてのステロイド投与の結果への影響はみられなかった。IL-6やTNF-αの炎症性サイトカインレベルは患者、健常人とも負荷前後で有意差を認めなかった。これらのことから、膠原病患者では(おそらく内外の慢性的なストレスにより)HPA-axisの持続的な活性化があり、またストレス負荷後に副腎皮質が十分に反応しないことが示唆され、HPA-axisの機能障害の存在が考えられた。これらの新知見は、これらの膠原病の病態とストレスおよびストレス適応系との関連を示唆する手掛かりとなり、またストレス軽減のための着護ケアや介入が膠原病患者のQOL向上のために有用であるとの理論的根拠につながる意義を持つと思われる。今後、これらの介入により患者のストレス対処系やQOLが改善するかどうかを検討する予定である。
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