研究概要 |
はじめに:昨年度は意識障害回復のための介入方法の検討を行った.これまで,意識障害回復への介入は五感への単一刺激の刺激が主に行われてきたが,この刺激では前頭葉での統合が生じにくいため,複数の感覚刺激を同時に行うことで脳活動を活性化させ意識障害回復に効果があるのではないかと考え,脳に損傷のない成人男女を対象者として,視覚刺激が遮断状態において感覚系の刺激を入力する方法について検討をおこなった.研究方法:成人男女で脳損傷経験のない者40名を対象者とした.研究課題は,課題1,閉眼臥位状態で(1)痛覚刺激,(2)嗅覚刺激,(3)関節刺激,の単一の感覚刺激を5分間行った.課題2,閉眼臥位状態で複数異種感覚刺激として食行動を想定した刺激を5分間行った。データはイーオス製の簡易型脳波計(1チャンネル)ブレインモニタEMS-100にてα波とβ波の発現数を測定した.結果・考察:課題1では閉眼臥位にて課題1の刺激をそれぞれ単一に5分間行った場合のα波とβ波の発現時間は,嗅覚刺激のβ波のみが4分以上発現していた.α波とβ波では変化率の平均値において痛覚刺激は嗅覚刺激と関節刺激にそれぞれ極めて有意な差が認められた(P<0.001)が,痛覚刺激と関節刺激の比較では差は認められなかった.課題2の複数異種感覚刺激におけるα波とβ波の発現時間は100%が5分間発現していた.嗅覚刺激と複数異種感覚刺激におけるα波の変化率を比較すると有意な差が認められた(P<0.05)が,β波では嗅覚より変化率が高いが認められなかった.この結果より複数異種感覚刺激中は傾眠傾向がなく前頭葉の活動が確認できた.臨床における応用は3例であるが試みたが,まだ分析に耐えられる数にはなっていない.今後,この基礎研究が臨床で応用可能であるかを検証する必要がある.
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