研究概要 |
はじめに : 昨年度は意識障害回復のための介入方法として、複数異種感覚刺激である食行動を想起する刺激が脳の活動に寄与するかを検討し、その確認をおこなった。この研究を基に今年度は、臨床応用を試みるための組織的な体制作りと、実際の調査を試みた。研究方法 : 脳損傷によって覚醒障害をともなう意識障害患者20名に対し、食事行動を想起するための複数異種感覚刺激を5分間行った。データはイーオス製の簡易型脳波計(1チャンネル)ブレインモニタEMS-100にてα波とβ波の発現数を測定した. 解析は介入前の安静時と介入中と、1週間介入を続けた後の安静時の3回の測定を行った。結果・考察 : 対象者は、脳損傷発症から1か月以内の患者(初期)が6名(男性2名、女性4名、平均年齢は60.33±13.54歳)、発症1か月以上6か月以内の患者(継続期)が6名(男性2名、女性4名、平均年齢は64.33±26.64歳)、発症から6ヶ月以上経過した患者(遷延期)が8名(男性3名,女性5名、平均年齢では67.50±28.43歳)であった。初期の患者の介入中と介入4週間後では、α・β波の発現時問が100%であった。α・β波の発現数の変化率では、各期における患者間では有意差がなかったが、初期の患者の変化率がα波5.09±8.07、β波3.26±2.89と最も大きく変化していた。よって、発症から初期の患者においては、この複数異種感覚刺激の介入の効果が大きいことが示される。しかし、継続期と遷延期の患者においても、介入する脳の活動が確認された。従って、複数異種感覚刺激は、意識障害患者への看護介入として効果があると示唆される。しかし、今回は対象者の脳損傷部位や疾患等に関してや、長期に関わることによる変化については、言及できていないため、今後の課題と考える。
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