「緩和ケアにおけるプレゼンス実践モデルの構築」にむけ、本年度は、緩和ケアを受けているがん患者および家族の体験から、プレゼンスが生じる要因とその成果を明らかにすることを目的として、調査を実施した。 【研究方法】 1.対象者:一般病棟あるいは緩和ケア病棟に入院しているがん患者15人、およびその家族18人 2.データ収集:半構成的面接を行った。面接では主に、看護師がそばにいて助けられたあるいは思いを話せた体験について、その状況、看護師との会話、自分に起きた変化について質問した。また面接内容については、対象者の許可を得てテープに録音した。 3.データ分析:録音したテープから逐語録を作成し、KJ法により分析した。 【結果】 1.がん患者の場合 データ分析の結果、患者の体験からプレゼンスに関する10の内容が明らかになった。がん患者は、「先の見通しへの不安」を抱く、あるいは「家族に気を遣わせたくない」「希望を持ちたい」という気持ちになったとき、看護師が「表出された気持ちの前で留まってくれる」「いつも自分を見ていてくれる」「辛いところに手を当ててくれる」「ほんの一言声をかけてくれる」と捉え、その結果、「自分らしくいられる」「肩の力が抜ける」「"今"一番したいことを言える」と感じていることが判明した。 2.家族の場合 家族の体験からは、プレゼンスに関する9の内容が明らかとなった。家族は、「ゆっくり話すことを大切にしたい」「離れていた時間を埋めたい」という看取りの方向性や「もうここまで悪くなったという切なさ」に対し、看護師が「自分と患者の話をゆっくり聞いてくれる」「いつでも声をかけてと言ってくれる」と感じており、その結果「向き合う時間をもらえる」「明るさと元気をくれる」と語っていた。また、看護師の存在について、「患者をよく知っているため自分のことも分かってくれる」「頼もしい」と捉えていた。
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